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地獄から人々を救う2人の天使:「ベーシックインカム」と「ヘリコプターマネー」



アフガニスタンの難民キャンプを訪れた日本の若者が目にしたもの(*1)。

戦場から逃げてきたであろう、腕の無い人、足のない人、全身にやけどを負っている人。そして彼らが地獄の亡者のように「1ルピー(約2円)下さい」と手を伸ばしてくる光景。
 そのうちの一人、両目の眼球を失った小学生くらいの女の子が「1ルピー、1ルピー」と悲痛な声を上げてヨロヨロと近づいてくる。

1ルピーくらい恵むことは可能だった。でもその光景に圧倒されてできなかった。

エチオピアでは、彼はストリートチルドレンに話を聞いた。
その子は言う。「残飯はいろんなご飯が混ざっているからおいしいよ。たくさんもらった時は別の子供たちとの物々交換に使うこともあるんだ」
物々交換で得たマッチで、焚き火をして寒い夜をしのぐという。

洗濯や水浴びをできない。シャツもズボンも穴だらけ。橋の下や建物の陰、寒い時にはマンホールや貨物列車で過ごすという。

そんなストリートチルドレンの数は世界で1億人(*2)。1億人いるのだ。

2021年5月現在の「国境なき医師団」のホームページの記事(*3)によると、、世界で年間約350万~500万人の5歳未満の子どもたちが栄養失調やそれに伴う免疫力の低下、感染症などで命を落とすという。1日にすると約1万4千人。2018年現在のUNICEFの記事によると、世界では8億人が飢餓で苦しんでいるという(*4)。昨日も死んだ。今日も、そして明日も。

目を転じて日本。

コロナ禍は、特に、ホテルや飲食、サービス業で働く女性へ大きなダメージをもたらしたという(*5)。

関連すると思われるほんの数例:かろうじて寝泊まりのできるネットカフェのパソコンで、腎臓を売るルートを検索する若い女性、毛羽立ち茶色く汚れたマスクを着けて「生活保護は受けたくない」と歌舞伎町に消えて行く若い女性。

それら自体が地獄と決めつけるのではなく、身がひどく犠牲になるようであれば、地獄のようなのだ。


そうした地獄に空から舞い降りてくる天使がいる

その名は、「ベーシックインカム」と「ヘリコプターマネー」だ。(*6)

ベーシックインカムは国民一人一人に継続して一定額の給付を行っていくというもの。

「ヘリコプターマネー」はその財源の一端を担うリアル打ち出の小槌だ。
「ヘリコプターマネー」政策とは、ヘリコプターで上空からお金をばら撒くように、お金を国民に直接給付するという政策。その財源は、貨幣発行益である。貨幣発行益とは、例えば10万円の金貨を発行する時の、原価4万円との差額だ。1万円札で言えば、発行原価20円との差額、9980円がそれにあたる。この「ヘリコプターマネー」をベーシックインカムの財源の一端に充てるのだ(*7)。

ところで、ヘリコプターマネーは下手に使えばインフレ、うまく利用すれば、リアル打ち出の小槌だ。
国の借金は直ちにインフレに結び付かない。インフレにならないようなレベルで、うまく、財源を確保できるのだ。
例えば、世界の政府債務残高は約90兆ドル(約9000兆円)だが(*8)、世界はインフレになっていない。
日米欧はそれぞれコロナを理由に100兆円ほどばらまいたが、インフレにならなかったのもその一例。

こうした国の借金は永久債か帳消しにすれば良いという意見に賛成だ。国の借金とは結局は国民一人一人の借金であり、適度な返済も必要な時もあるようだが、借金を帳消しにしても問題が生じなければ、国民の借金を帳消しにすることにもなるのだ。

先に述べた「地獄」はこの「ベーシックインカム」と「ヘリコプターマネー」という二人の天使によってだいぶ変わる。地獄を脱する人も多く出る。

想像してみよう。もし、先に述べた地獄のような状況でお金が給付されるとすれば。

1ルピーと言わず、もう少しでも給付金があれば、アフガニスタンの難民たちは食料、衣類などを得られる。給付金が増えれば、医療も受けられるかもしれない。先ほどの難民たちが、家族とともに安心して笑顔で食卓を囲んで、病気やけがであれば医師の手当てを受け、傷や痛みを癒す。明日の食料を心配せず、笑顔と希望で新しい生活を探していくことを想像できる。

ストリートチルドレンは、もはや食べ物に困らず、清潔な服装で、まともな環境を求められる。ヘリコプターマネーの利用方法によっては、スラム街をきちんとした住環境に再整備したり、子どもたちが学校に通えるようにすることができるだろう。道端で虐げられていた子どもたちが、笑顔で、お腹いっぱい食べ、たくさん遊び、ぐっすり眠れるようになるのである。

日本ではどうだろうか?

例えば月7万円が無条件で支給されるのである。先ほどの女性でも、腎臓を売らなくとも、生活保護を受けなくとも、何の負い目もなく(*9)、生存を続け、よりよい生活へのチャンスを期待できるのである。

歌舞伎町で働こうとしていた女性についてはどうだろうか?例えば月7万円の支給で、それ以外に思いつかないから仕方なく夜の仕事に就くのではなく、別の機会を探すという余裕や選択肢も提供できるのである。

要は、無条件で定期的な収入が得られ、収入が増加するのである。月7万円だけでは生活は困難でも、それは生活保護を改善したセーフティネットとして機能するだけでなく、収入を増やし、貧困を改善するのである。

また、多くの人がより余裕をもって仕事を選べるようになるのだから、劣悪な労働条件の改善が期待できるのである。たとえば、3K労働においては賃金上昇や労働強度・労働時間の緩和が期待できるのである。

そして世界は、全体的には、飢餓、貧困、労働が緩和され、地上により幸せが降り注ぐのである。

この時、第3の天使「逆子ども手当」必要な地域もあるかもしれない。

「逆子ども手当」とは、子どもを産む数の少なさに応じてその女性に定期的に支給する給付金である。人口多寡を抑制すると同時に女性の保護を推進する効果を併せ持つ。すなわちそれは、ベーシックインカムの世界的導入になどよって一部地域で起こるかもしれない人口の過剰な増加や、人口多寡を抑制する力を持つ天使でなのある。

もう一つ大事なのは、ベーシックインカムは一部の国だけでなく、国際協調のもと、世界規模で実施すべきだということである。なぜなら、例えば、一部の国だけがベーシックインカムを導入、自国の通貨を大量に発行し、そのお金で諸外国、例えばアメリカの財を買い漁ろうとした場合、それらの国の通貨は国際的に暴落するはずだからだ。

(<2021.5.31追記:とはいえ、ある国の通貨価値の決定要因のいくつかは通貨発行量の程度と外国との相対性であるとも考えられる。

それゆえに、過度の通貨発行を控え、かつ、EUやアメリカといった主要国も同時にベーシックインカムを導入するならば、日本やイギリスといった国はベーシックインカムを安全に導入することができるのかもしれない。(2021.5.31追記)>)

今日と明日を変えていこう

わたしたちができることはベーシックインカムを推進する政党に投票することである。そして国連やサミットを通じて、ベーシックインカムが世界規模で実施されるように活動するよう、日米政府に働きかけていくことである。

まとめ。

世界の多くの国でヘリコプターマネーやそれを利用したベーシックインカムが導入されれば、貧困、飢餓、労働が世界規模で緩和され、地獄を脱する人が多く生じると期待できるのである。まずは、そのための投票をしよう。


参考文献など

(*1)アフガニスタンの難民キャンプの話、ストリートチルドレンの話
『本当の貧困の話をしよう』石井光太 文藝春秋 2019年
(*2)ストリートチルドレンの数=3000万~1億とも。
https://www.unicef.or.jp/children/children_now/philippines/sek_ph02.html
(*3)国境なき医師団のウェブサイトより
(*4)8億人が飢えで苦しんでいる
ユニセフのウェブサイト
https://www.unicef.or.jp/news/2018/0151.html

(*5)日本で苦しむ女性の例
 週刊女性PRIME 2020/12/13
「女性の貧困・自殺者が急増!政治に求めるリアルな声と「日本死ね」の叫び」
(*6)ベーシックインカムとヘリコプターマネーについて
『AI時代の新・ベーシックインカム論』井上智洋 光文社新書 2018年
『毎年120万円配れば日本が幸せになる』井上智洋 小野盛司 扶桑社 2021年
(*7)ベーシックインカムの財源のもう一端は、税収である。*6の文献の著者、井上智洋氏は税収とヘリコプターマネーによる2階建てのベーシックインカムを構想している。
(*8)世界の政府債務が90兆ドルくらい
 日経電子版2020年10月14日「世界の政府債務 GDPに匹敵 IMF20年予測」

(*9)今の生活保護のいくつかの問題点
例えば、まずは家族や親せきに頼ることを勧められたり、場合によっては財産を一部没収されたり、あるいは、収入を得ればその分給付が減ることなど。
『ルポ・生活保護』本田良一 中公新書 2010年
『AI時代の新・ベーシックインカム論』井上智洋 光文社新書 2018年